バックミンスター・フラーとAI

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Buckminster Fuller.avif

バックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)(1895–1983)は、アメリカの建築家・発明家・デザイナー・思想家です。
「宇宙船地球号(Spaceship Earth)」という言葉を広めたことや、ジオデシック・ドームを世界に普及させたことで知られています。

バックミンスター・フラー

テンセグリティ球を持つフラー

ジオデシック・テンセグリティ球を手にするフラー。「テンセグリティ(tensional integrity)」もフラーの造語です。 出典

ダイマクション・ハウス(Dymaxion House)

「ダイマクション」は dynamic・maximum・tension を組み合わせた言葉で、フラーの多くの作品に冠されています。ダイマクション・ハウスは航空機産業の工場・技術で量産することを想定した、軽量で組み立てやすいアルミ製の円形住宅です。量産には至らず、現存する唯一のプロトタイプがヘンリー・フォード博物館に展示されています。

ダイマクション・ハウス(米国議会図書館所蔵写真2)

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ヘンリー・フォード博物館のダイマクション・ハウス

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ダイマクション・カー(Dymaxion Car / 1933年)

流線形のボディに三輪、後輪で操舵するという大胆な設計の車です。1933〜34年のシカゴ万博(Century of Progress)で注目を集めました。フラーはこれを単なる自動車ではなく、いずれ空も飛べる乗り物の「地上走行モード」として構想していました。プロトタイプは3台作られ、1台が現存しています。

1934年のダイマクション・カー(リノの国立自動車博物館)

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レーン自動車博物館のダイマクション・カー・レプリカ

レーン自動車博物館のレプリカ。 出典

ダイマクション・カーの側面図

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ダイマクション地図(Dymaxion Map)

地球の表面を多面体に投影し、それを展開して平面にした世界地図です。1943年に立方八面体版が発表され、1954年には建築家の貞尾昭二(Shoji Sadao)とともに正二十面体ベースの改良版を作りました。大陸の形や面積のゆがみを小さくし、切れ目を海の上に置いているのが特徴です。

ダイマクション地図が展開されるアニメーション

正二十面体から平面の地図へと展開されるアニメーション。 出典

フラー図法の世界地図

出典

海洋がつながって見えるダイマクション地図

海をひと続きに見せる配置のバリエーション。 出典

大陸と主要な島を示したダイマクション地図

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フラー夫妻のドーム・ハウス(イリノイ州カーボンデール)

南イリノイ大学カーボンデール校で教えていた時期に、フラーと妻アン・ヒューレットが暮らしたドーム住宅です。

カーボンデールのフラーのドーム・ハウス

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保存されたドーム・ハウスの外観

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クライマトロン(ミズーリ植物園 / 1960年)

ジオデシック・ドームで覆われた温室で、世界初の全館空調の温室とされています。設計はフラーのライセンス会社 Synergetics 社の T.C. ハワードです。

クライマトロン

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モントリオール万博アメリカ館 / モントリオール・バイオスフィア(1967年)

フラーと貞尾昭二が設立した Fuller & Sadao Inc. の最初のプロジェクトで、1967年モントリオール万博(Expo 67)のアメリカ館として建てられた巨大なジオデシック・ドームです。現在は環境博物館「バイオスフィア」になっています。

Expo 67のアメリカ館

万博当時のアメリカ館。 出典

アメリカ館とミニレール

ドームの中をミニレールが通り抜けていました。 出典

アメリカ館の内部

万博当時の内部。 出典

モントリオール・バイオスフィア(別角度)

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バイオスフィアの内部

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夜のバイオスフィア

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夏の緑とバイオスフィア

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スポレトスフェラ(イタリア・スポレート / 1967年)

1967年、第10回「二つの世界のフェスティバル」を機にフラーがスポレートの街に寄贈したジオデシック・ドームです。

スポレトスフェラ

出典

スポレトスフェラの細部

三角形のユニットの組み合わせがよく分かる細部。 出典

ヴィトラ・キャンパスのドーム(ドイツ・ヴァイル・アム・ライン)

家具メーカー・ヴィトラのキャンパスに建つフラーのジオデシック・ドームです。

ヴィトラのジオデシック・ドーム

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ヴィトラ・ドームの外観

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ヴィトラ・ドーム

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ヴィトラ・ドームの入口

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フライズ・アイ・ドーム(Fly's Eye Dome / 1965年設計)

ハエの複眼に着想を得た、丸い開口部がたくさん並ぶドームです。フラーはこれを手頃で持ち運べる未来の住まいとして構想し、開口部に太陽光パネルや集水の仕組みを収めて自給自足できるようにすることを考えていました。生前に3つのプロトタイプを自ら製作しており、そのうち最大の15m版は2017年にアーカンソー州のクリスタル・ブリッジズ美術館に設置されています。

クリスタル・ブリッジズ美術館のフライズ・アイ・ドーム

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フライズ・アイ・ドーム

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フラーのフライズ・アイ・ドーム

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ユニオン・タンクカー・ドーム(1958年)

ルイジアナ州バトンルージュに建てられた直径約117m(384フィート)のドームで、完成当時は世界最大の無柱空間でした。鉄道タンク車の修理工場として使われましたが、2007年に解体されています。

住宅、車、地図、そして巨大なドームまで、フラーの作品はジャンルがばらばらに見えて、どれも「より少ない資源で、より多くのことを実現する」という一貫した考え方でつながっています。写真で並べてみると、三角形を組み合わせた幾何学的な美しさがどの時代の作品にも通じていることがよく分かります。

フラーが考えた「富」と経済

建築やデザインで知られるフラーですが、富や経済についても独特の思想を持っていたようです。1969年の著書『宇宙船地球号操縦マニュアル』などから、その考え方を簡単に紹介します。

富とは「この先の日々」を支える力

フラーは富を、お金の量ではなく、環境にうまく対処して、人生の「この先の日々(forward days)」の制約を減らしていく能力と定義しました。富を「これから先の時間をどれだけ支えられるか」で捉えていたのが特徴です。

富は使うほど増える

フラーによれば、富はエネルギーと知恵でできています。エネルギーは保存則により減ることがなく、知恵は経験するたびに増えていきます。そのため、富は使うほど増えるというのがフラーの結論でした。

経済についての主な主張

  • 会計への批判:いまの経済会計は、全体が部分の総和を超える「シナジー」を富として数えていない。
  • 失業者に研究奨学金を:機械に仕事を奪われた人には、研究やただ考えるための生涯の奨学金を与えるべきだと提案した。10万人に1人が大発見をすれば、残り全員分の費用は賄えるという計算で、ベーシックインカムの先駆けともいわれる。
  • 石油の本当のコスト:自然が石油をつくるのにかかったエネルギーを換算すると、1ガロンあたり100万ドル以上になる。それを燃料として燃やすのは大きな浪費だと指摘した(『クリティカル・パス』)。
  • 地球規模の電力網:世界の電力網をつなげば、エネルギーを効率よく使え、再生可能エネルギーも活かしやすくなると考えた。

ジオデシック・ドームで「最小の材料で最大の空間」を目指したのと同じように、フラーは経済においても「より少ない資源で、より多くの人を支える」ことを考え続けていました。

フラーの提案とAI時代

フラーは1969年の時点で、機械が人の仕事を置き換えていくと考えていました。そして、仕事を失った人には、研究や「ただ考えること」に専念できる生涯の奨学金を与えるべきだと提案しています。

フラーは同じ本のなかで、人間は「専門家」としてはやがてコンピューターに置き換えられていくだろうとも述べています。
彼が大切にしていたのは、一つの分野に閉じこもる専門家ではなく、物事を全体として捉えて考える人でした。
機械が専門的な作業を引き受けるほど、人間には全体を見渡して考える役割が残る。フラーはそう考えていたようです。

AIが何でも作れてしまう時代にこのフラーの提言は確かに考えさせられてしまいます。

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